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2007年11月 3日 (土)

アラン・シャペルに捧ぐ

Photo 1枚のモノクロ写真を見た。

コックコートを着たアラン・シャペルが屈みこみ、三匹の黒い犬を可愛がっている光景。
右手で子犬を抱き上げ、左手と左足で挟み込むようにしてもう一匹の子犬を抱え、さらに、無防備にさし出した彼の頬を母犬が舐めている。犬たちに語りかけているのであろう、口元は動いているように見える。コックコートの白と、愛犬たちの黒い毛並みがくっきりとしたコントラストをなしている印象的な写真だった。

「厨房のダ・ビンチ」、「フランス料理界の巨星」とも呼ばれていたアラン・シャペルは、1937年、フランスのリヨンに生まれた。母は科学技師、父はリヨン近郊のミヨネーという小さな村で<メール・シャルル>というレストランを営んでいた。父の影響から料理人を志したアラン・シャペルは、15歳で当時のリヨンの名のあるレストラン<シェ・ジュリアンヌ>にて、ジャン・ヴィニャールの元で料理人の修行をはじめた。その後、ヴィエンヌの<ラ・ピラミッド>に移り、かのフェルナン・ポワンの元で働く。※<ラ・ピラミッド>では、後にあのジョエル・ロブションが活躍する。
約5年の修行の後、3年間の兵役に服すが、除隊の後、1967年の父の突然の死によって<メール・シャルル>を継ぎ、瞬く間に一流のレストランに育て上げる。1969年にミシュランの二ツ星を獲得し、4年後には名前を<アラン・シャペル>と変え、三ツ星を獲得した。

その後、52年という生涯を閉じるまで、フランス料理界に偉大な功績を残した。
食べた人にしかわからない「消える芸術」は、多くの人を魅了してやまない。アラン・シャペルが信じていた料理への想いを具体的な形にしながら、築き上げた彼独特の料理哲学は、彼の死に際して消滅することなく多くの有志に引き継がれている。志ある後進の者たちが再現、発展させることが出来るよう自分の料理哲学を伝承する事を崇高と呼ばずしてなんと表現しよう。

アラン・シャペルの遺志を引き継ぐ愛弟子である、フィリップ・ジュスに厨房を案内してもらったことがあるが、その際に見せてもらったのがモノクロの写真であったのだ。
「ムッシュ・フィリップ、あなたの料理は一言でいうとどんな料理ですか?」と、質問してみた。
彼は迷いなく「アラン・シャペルです」と、そう答えた。その言葉に、それ以外のニュアンスが混じっていないことはすぐにわかった。彼は、アラン・シャペルの精神や料理哲学を引き継ぐことに、とてつもない誇りと畏敬の念を抱いている。逆の言い方をすれば、アラン・シャペルは死してなお、弟子の体や遺志を借りて自分の料理を究めようとしている。

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