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2008年10月17日 (金)

「HAL YAMASHITA」 山下春幸シェフの世界

食・食文化の勉強を続けていて、原点に返ろうと旅をして来た。立ち寄った京都で、日本の伝統食文化の粋を椀物で知る。塩、一粒足されたら壊れてしまうのではないかとさえ思えるギリギリの細い線に描かれた透明の歴史図・・・。そんな究極の味に出会えたことこそが、旅の醍醐味。出来立てでしか味わえない、京上生菓子の最高峰との対峙には、伝統と言う重みに対しての尊敬の念を深めた。邪念無く只食べる事に無心で向かえた至福の時間であった。

縁あって人は出会うものだと思うが、その縁の深さを意識せざるを得ないかのように連続して、六本木ミッドタウン「HAL YAMASHITA東京」の山下春幸シェフとの対談や取材の機会が重なった。その中で、1対1で厨房とカウンターテーブルを挟んで食事をするという光栄を授かった。何度となく食べて来た山下シェフの料理の中にある「何か」を見つけたくて、席に座る。

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ハルさんの料理は、とても「ピュア」であると思う。しかし、ピュアなものを作ろうとして作っている訳ではない。選ぶ食材、調理方法、組み立て方、料理人の心、全てがピュアである結果として「ピュア」に仕上がるのだ。最初から全てのプロセスがクリアでないと、透明な水に墨汁が一滴でも落ちれば濁ってしまうのと同じに誤魔化しは利かない。

食べ手から考える料理には、体が欲して食べたくなるものと、興味や勉強のために構造を理解したいなど好奇心から向かうものがある。こうしたものをフランスでは「理解を探す」と、いうそうだが、世界でもNO.1とも評されるスペインの三ツ星レストラン「エル・ブジ」やフランスの「ピエール・ガニエール」の考え尽くされて高度なテクニックを駆使して作られる料理では、見た瞬間に反射的に面白く感じられることはあるが、すぐに喜びや満足感には結びつかない。そこに辿り着くまでに、どうしても時間的なズレが生じる。理解を探さざるを得ないというのは現代美術を鑑賞するにも似ている。

ハルさんの料理は、もっと素直に、もっと直截に、人の心に入っていけるものでありたい。そう感じる。人の心にストレートに通じるクリアなものであり、そして、体にいい料理でありたいと聞こえてくるようだ。それは、食材の選び方、保管の仕方からも見えてくる。

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カウンターのガラスケースの中に並んでいる食材の中には、一見水分がなくなってしまっているように見える魚などが見受けられる。一般に料理を提供する側は、見せる食材には外見を気にするために、定期的に水をかけたり、浸けたりとしたがるものだ。日本の調理レシピでは、食材の臭みを抜くという下仕事がよく用いられる。必要以上に洗ったり、時には牛乳につけたり・・・。フランスなどでは、食材の本来の味や香りを逃さないようにとっておくことが大事とされる。だから、魚もなるべく水につけないようにするし、帆立や牡蠣なども殻から出したら、一切水にはつけず、布巾で砂を取る程度にする。きのこ類も然り。適度の熟成は見た目を誤解させる場合がある。肉などの熟成では黒く変色してカビなどが被う場合も在るほどだ。食材のクセは個性なのである。だからこそ、その食材への信頼がとても大切で、ハルさんはその部分に大変な労力をかけている。全ての部位が安心で安全に食べられることにこそ生産者のプライドが垣間見える。だから食材のすべてが調理される。結果として、感謝が表せるのだとも考える。

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目の前で、山下シェフは調理を始める。全くのアドリブにて食材の組み立てを行なう。指示が飛び、時に閃きで変更される。料理をする時は何も考えていない。そう見えてしまうほど、流れがあって自然である。無の境地ともいえるのかもしれない。
身体が自然に動いて、自然に料理が生まれていく。全ては感覚的な世界である。そこには「魂胆」など何もない。ここで料理の味や解説などという野暮をいうつもりはない。ひたすらに愉しく刺激的で、至味の世界を堪能させてもらった。

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五感で感じて味わい、発見と驚きを体験して欲しい。レストランでは、リラックスして出された料理を楽しむことに尽きます。

万人が全て等しく美味しいという料理など存在しない。その人の知識・教養、歴史や背景、積み重ねた情報の解析能力などで感じ方は千差万別だからこそ、相性と言うものが大切なのだと思う。自分の感性に合う味を見つけたら大切に長い付き合いをお薦めする。双方が刺激し合い、お互いを高め、未来を見つめられる関係が築けるかもしれない。

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味に国境などない。ハルさんの料理が世界中の人の舌を満足させられるという確信を得て、いずれそのシーンを同じく共有してみたいという想いを強めた。

どこに向かっているのかを知るために、どこから来たかを忘れてはならない。
京都で出会った究極の伝統の味に触れ、ハルさんが作り出すその日本の伝統を“精神”で継承する新しい世界観を見つけられた。『こだわらず』『とらわれず』、【無我の境地】の中にこそ彼の料理哲学の究極の答えがあった。

料理道、道半ば。山下春幸という料理人から目が離せない。

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