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2010年8月 6日 (金)

【“三”右衛門】夢の競演

夢の競演と言ったら、誰と誰の組合せを思うだろう?

世界3大テノール。料理の鉄人。スポーツのオールスターゲーム。マイケルジョーダンとマジックジョンソン。ビヨン・ボルグとジョン・マッケンロー・・・古いか・・・

私にとって、夢のまた夢の顔合わせが実現する。フードアナリストになってこれほど心が躍る企画があっただろうか?それは、“三”右衛門の揃い踏みである。44年振りというから、一生に一度見れるかどうかという価値なのである。

現代を代表する陶芸三窯と“百段階段”の美の競演「肥前×唐津 陶磁器展」が8月6日から9月5日まで、目黒雅叙園にて開催される。http://www.megurogajoen.co.jp/event/toujiki/index.html

14代酒井田柿右衛門×14代今泉今右衛門×14代中里太郎右衛門の世界が共鳴する。

感性の交錯、伝統の足跡、400年という仕事、匠の技、土と炎の歌を聴け!五感で感じろ!

今日は、プレス発表に呼んで頂き、現代の名工にお目にかかって来た。記者会見と開会宣言としてのテープカット。内覧会に時を忘れた。

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古(いにしえ)の記憶を纏う焼き物の息吹を受け止める会場は、百段階段。伝統的な美意識を残す目黒雅叙園で現存する唯一の木造建築。東京都指定有形文化財でもある。実際は九十九階段で、百段に一段足りない。これは完璧を目指す芸術の世界で、完成されることなく美を追求する姿勢に共鳴する気がしてならない。

通常の展覧会と違うのは、会場が畳であり和室に設えてある点だろう。拝見は正座で見ることが出来る。足の裏から伝わる古木の風合い、壁画とのコラボ、空間のマジックが五感を総動員して陶芸の美に触れる機会などもう訪れることはないかもしれない。必見である。

14代太郎右衛門さんの計らいで、特別に代表作の「唐津井戸茶盌」を直接拝見させて頂ける光栄を授かった。もちろん指輪、時計を外し手で触れた。その温かい風合いと味わいが、太郎右衛門さんの人柄そのものに感じたのは偶然ではないだろう。

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14代柿右衛門さんからは、深いお話をたくさん聞いた。陶芸作家と職人の違いについてなどだ。家柄と技を継承する匠の世界では、5万個の茶わんを焼いて一人前。そこからがスタートなのだと。器用な人は続かず、不器用でゼロからの若者こそが匠の領域に辿り着く世界なのだと。人間国宝に指定されたが、それは関わる全ての職人の代表であって自分ひとりの名誉では決してない。絵付師や轆轤、焼付けたちの家系もそれぞれが代々仕事を継承している世界なのだ。道具を作る職人も減り、更にはその材料となる木材も無くなっているという。そのため自ら植樹をしているとも。仕事は地味で、単調な仕事を繰り返すことは自分との戦い。自らを律し、精神力を磨く修業に器用な人は個性を出そうとするという。ひたすらに正確な技を追求して、老年期になって「遊べばいい」と仰る。器用な人間が、個性を出したいなら作家を目指す方がいいだろうと。厳しい世界に生きる運命を受け入れる生き方にこそ芸術を見る思いです。基礎を身につけるひとつの単位が30~40年。見た目が派手で大きな作品はそう大変ではない。それより、日常で使う茶碗を作ることの難しさは一生だそう。轆轤の腕前は、茶碗を作らせればすぐに解かるのだといいます。

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「メディアでは、作家が上で職人が下と言わんばかりの評価だが、実際は逆だと考える」という言葉が深く印象に残った。

何の世界でもひとつのことを追求するのに基礎勉強は40年なのだと妙に納得。

今日は、所用で不在だった14代今右衛門さんの作品にも震える感情を覚える。“色鍋島”の品格は例え様のない美を感じます。

日本が世界に誇る陶芸品と昭和の竜宮城と讃えられた百段階段のドラマに心震わせて欲しい。

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