日本の原風景のある、食材の理想郷“山形”に学ぶ③
今回の事業には、東京のシェフたちを山形にお連れして生産の現場を見てもらい、生産者たちと地元の料理人や関係者たちとの交流を図るというミッションが与えられていた。そこでフランス料理界の重鎮プティ・ポワンの北岡尚信オーナーシェフに相談し、快く山形のためにと同行を承諾して頂いた。銀座・美しょうの小俣尚巳オーナーも参加下さった。さて、いよいよ生産者を訪ね、視察が始まる。
迎えてくれた山形県の行政側の皆様と共にバスで移動。その中に山形大学で農学部生物生産学科フルーツサイエンス(くだもの学)で教鞭を取る平 智教授にお目にかかれた。以前より奥田シェフから山形大学との深い信頼関係と学びの関係を聞いていたので、良い機会を与えて頂けたと興奮。脳生産物の在来種などについても大変興味深い話を伺うことが出来て、これは1度ではもったいないし、中途半端な学びでは済まされないという思いを強くする。食に関わる専門家として通い詰めて学び・知り・伝承する責任を果たすべく、今後も山形との関わりは一層深まりそうだ。
ツアーの内容は・・・
1日目【庄内地方】
産地1 9:00~ 9:40 だだちゃ豆
産地2 10:20~11:00 民田なす
昼食&懇談会 12:30~14:00「鵜渡幸」
産地3 14:10~14:50 いちご
産地4 16:00~16:40 パプリカ
赤川花火大会
2日目【置賜地方】
産地5 10:20~11:00 おかひじき
産地6 11:20~12:00 ぶどう(ワイナリー)
昼食&懇談会 12:10~14:30 いきかえりの宿「瀧波」
産地7 15:00~15:40 薄皮丸なす
産地8 16:20~17:00 うこぎ新鞘
それにしても山形の夏は予想以上に暑かった。現地で感じたことは、昼夜の寒暖の差が激しいこと、そして四季がはっきりと移ろうこと、山々と川から海の環境が近しくも見事に共存しているなど“生きる”ために逞しく育とうとする力を支える生産者の方々が居る。人々が優しく、そして正直。そんな人柄は、作物に反映されるものである。今回多くの人々と関わったが、皆さん山形人気質を人懐っこく表してくれてとても癒された。
生産者の努力や苦労の奥底にあったもの、それは郷土を愛する気持ちなのだと実感。特に印象深かったのは、鶴岡市民田の在来野菜「民田なす」を作る生産者の話だ。実は「なすがアレルギーで食べれません。」という。「なぜ?なす作りを始めたのか?」という問いかけに対して、「私が継承しなくては、この土地で生まれたこの野菜が途絶えてしまうから。」と、笑顔でしみじみ答えてくれた。感動などという簡単な言葉では表せない尊敬の気持ちとその直向きな姿勢と心に“感謝”という気持ちで一杯になった。実際に訪ねた生産の現場では、一方ならぬ苦労や工夫、大変な労力を目の当りにした。炎天下から凍える気候まで、自然と向き合い大切に育む命の種を、もっと深く理解して買い支える(応援する)必要性を強く感じる。
参加してくれた北岡シェフを初めとするプロフェッショナルたちも口を揃えて、この視察で得た大切な生産者たちの想いを作る料理に反映させたいという。こうして大切に作られたものたちが、こうした交流事業を通じて日本の食文化の発展へのきっかけになるように、そしてこの運動が日本の元気に結びつくように消費者へ正しい情報を発信していこうと思う。
もちろん視察では、良い部分だけでなく改善点などもたくさん見つかった。地元が提唱する食べ方だけでは、若い世代では食べにくい伝統の食材もあり、調理の工夫でもっとたくさんの若者たちに在来種の野菜などを食べてもらえるだろう余地はたくさんあると感じます。観光客の視点で見ると、地元で当たり前過ぎて見過ごしている自然や環境、物やおもてなしや料理方法など、まだ大きな可能性を感じます。人を喜ばせるには、自分も楽しめること。そして、私の立場で提唱したいのは、生産者たちが愛情込めて作った農作物を超一流の料理人がどのようにお皿に仕立てるのか?そして、その味を実際に体験して欲しい。その体験が、また生産の工夫やヒントにも繋がると思います。作り手と食べ手を笑顔で結ぶ架け橋として、今後も双方向でのコミュニケーションの中心として応援していきます。
「食」ツーリズムやまがた創造事業の第2回目が10月に開催される。また参加させて頂ける光栄を授かる。もちろん、山形についての勉強を続けて、実際に訪ねる次期に今回の学びと次回の視察で得られる様々な体験を日本の食文化の発展と山形発の交流事業としての価値と意義を多くのメディアや人々へ伝ます。
山形とご縁を頂けたことを本当に嬉しく思い、今後も通い続ける時間を大切に楽しんで全国にも情報発信したいと思います。
今後も個別の食材や生産者、観光などの観点から様々なレポートをお届けします。
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